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Gokigen.com

伸びきった下着のゴムのように緩慢でくだらないブログ

「穴熊囲い」鉄壁と言えばこれ。

将棋における囲いの中で「最強の囲い」と言われているのが、この「穴熊囲い」です。形の通り熊が盤面の隅で冬眠しているように見えるイメージからそう呼ばれており、同じような環境にある、自室から一歩も出たくないヒキニートたちからも親しみを持たれています。

(図1)居飛車穴熊

堅すぎる遠すぎるというその常軌を逸した優秀性から、一時は「穴熊を使う人は卑怯者」「勝ちにこだわる無礼者」「友達を失くす戦法」などと皮肉と偏見に満ちたレッテルを貼られたこともあったけれど、実際のところ、それはどうしても勝ちたい人による狡猾な口車に過ぎず、勝負所の将棋では穴熊を痛烈に批判していた人でさえも無言でしれっと使っていたという歴史があります。

そうした背景から、居飛車穴熊の定跡が徐々に整備されていくこととなり、振り飛車党を将棋の世界から根こそぎ引っこ抜いてぺんぺん草も生えない不毛な大地にしてやろうという魂胆の「居飛車穴熊を崇拝する過激派組織」や、ゆるキャラ「アナグマン」が現れるほどに、将棋界において猛威を振いました。「とりあえず穴熊に組めればいける」というフレーズが流行したくらいです。

 しかし振り飛車党も黙って涙を飲んでいるわけではなく、ついには振り飛車党総帥によって「藤井システム」という革新的で超攻撃的なおどろおどろしい戦法が開発され、将棋界にまるで第二次世界大戦のミッドウェー海戦を彷彿させるパラダイムシフトが起きました。安住の地にぬくぬくと暮らしていた居飛車穴熊党の平和を奪い、現在も鍔迫り合いが続いています。

見ての通り(図1)、金銀が連結した形で集合しているため非常に強固です。攻めるには採掘機でガリガリと駒を一枚一枚剥がしていく必要があり、どうしても負荷がかかるため途中で何人かが駒交換として犠牲にならざるを得ません。これは俗に「ちぎってはポイ作戦」と呼ばれています。加えて、完成してしまえば絶対に王手がかからない形「Z(ゼット)」になるので、終盤の斬りあいで手勝ちを狙えます。

その半面、「単純に数を足せば崩せる」「囲いの反対側がガラガラで隙満載になりがち」「一番奥に玉がいて逃げ道がない」「囲いを作るにはかなり手数がかかる」という性質も穴熊にはあります。繊細な技術が必要とされるので、初心者が下手に扱ってしまうと残念な結果となることもある上級者向きの囲いでもあるのです。将棋覚えたての頃、早々に相手が攻めてきて「穴熊やりたかったのにできなかった」と嘆くのは誰もが経験することです。

初心者同士の戦いでは、「数を足せばいい」とシンプルに考えられるので、意外にも攻めやすく感じたりもします。逆にふらふらと逃げられる方が暖簾に腕押しで捕まえられないのです。ゆえに「穴熊などやるようでは強くなれない」と教える人もいます。

穴熊の桂馬が跳ねることを「パンツを脱ぐ」と言い、堅かった穴熊が一気に弱体化(参考図)してしまう比喩として使います。たまにパンツを脱いで強くなる名人級の人もいますがそれは例外です。よくあるのが、将棋を始めてしばらくしてからこの言葉を発見し、新しく卑猥な言葉を覚えた小学生のように無邪気に喜んで多用してしまうパターンです。あまりに言い過ぎると異性に嫌われる結果となり、彼女がいない理由を将棋に転嫁してしまうので注意が必要です。

(参考図)

振り飛車が用いる場合は、右辺に構築(図2)することになります。居飛車穴熊と比べると角がいないため厚みで劣るような感覚がしますが、こちらも優秀な囲いです。

f:id:Cp7N2Rdr:20170419133621p:plain(図2)振り飛車穴熊